Monthly Health Report (2016.11)

今月のことば

腸内細菌移植療法

健康な人の腸内細菌を、潰瘍性大腸炎で下痢や血便に苦しむ患者の腸内に移植(注入)し、腸内環境を改善する治療法「腸内細菌移植療法」が注目を集めています。

潰瘍性大腸炎は、腸内細菌の異常により大腸の粘膜がただれ、潰瘍ができる炎症性の病気。下痢や血便、発熱などの症状を起こします。

腸内細菌移植療法では、健康な人の便から採取した腸内細菌を患者の大腸に移植します。移植する細菌のもとは患者の家族から提供される便。提供者は血液検査や便検査を受け、感染症や寄生虫などの問題がないことを確認します。

患者は移植前に抗菌剤を2週間服用し、腸内環境をリセットします。抗菌剤で除菌すると、腸内から良い菌も悪い菌もほとんどいなくなります。そこに提供された便を生理食塩水で溶かし、フィルターで粗いカスを除去した腸内細菌を大腸内視鏡を使って患者の盲腸周辺に注入すると、腸内環境は改善されていきます。

2014年から始まった臨床試験では、下痢で1日に10回以上トイレに駆け込んでいた患者が、治療を受けて数か月後には病状が落ち着き、排便回数が1日1~2回に減ったという例もあり、一応の治療効果が得られています。

わたしたちの腸内には、数百種の腸内細菌が100兆個ほど棲み、増殖を繰り返しています。それらの集まりを「腸内細菌叢(そう)」と呼び、下痢や便秘などの便通異常や、潰瘍性大腸炎といった病気と深く関わっています。

腸内細菌叢のバランスを整えるには、日頃から腸によい食事を心がけることが大切です。乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は、ヨーグルトや発酵食品などに多く含まれています。腸内で善玉菌を増やすには、食物繊維やオリゴ糖が豊富な穀物、イモ類、海藻、大豆、バナナ、牛乳などをすすんで摂るとよいでしょう。