Monthly Health Report (2023.11)

ゆるやかメンタルヘルス術

血糖値をコントロールして
メンタルを健やかに保つコツ

血糖値は、我々の身体とメンタルに密接に関係しています。血糖値の過剰な低下や乱高下は、イライラや不安感などメンタルの乱れを引き起こすことがあり、注意が必要です。今回は、血糖値をコントロールしてメンタルを健やかに保つための具体的なコツをご紹介します。

血糖値とメンタルの深い関係

人体は、糖をエネルギー源として動いています。食事から糖を摂取すると血糖値(=血液中の糖濃度)が上がり、食後ゆるやかに降下していきますが、何らかの原因で急激に降下してしまうと「低血糖」の状態に陥り、集中力の低下、気分の不安定さ、倦怠感、脱力感、など、脳のエネルギー不足によるさまざまな症状が現れます。

この状態が続くと生命に危険が及ぶため、脳は「食べ物を食べて糖を摂取すべし」というシグナルを発信します。このシグナルによって大量に分泌されるのが、アドレナリンやノルアドレナリンといったホルモンです。これらのホルモンは交感神経を刺激するため、イライラや不安感、動悸、発汗、頭痛などが現れやすくなります。

機能性低血糖の3つのタイプ

病気や内臓の状態ではなく食事や生活習慣に起因する低血糖を「機能性低血糖」と呼び、機能性低血糖は次の3タイプに分類されます。

(1)反応性低血糖
食後に血糖値が急上昇し、その後急降下するタイプです。原因はインスリンの分泌速度が遅く、かつ過剰に分泌されること。体内の血糖値が不安定になり、動悸や発汗、イライラ、不安感、焦燥感などが生じやすくなります。
(2)無反応性低血糖
食後の正常な血糖値の上昇がなく、そのまま低血糖に転じるタイプです。インスリンの分泌量が不安定であることにより引き起こされ、脳への栄養供給の不足による疲労感、倦怠感、やる気や集中力の低下などが生じやすくなります。
(3)乱高下型低血糖
食後に血糖値が乱高下するタイプです。通常、食事で血糖値が上昇すると膵臓からインスリンが分泌されて血糖値を下げようとしますが、糖質の摂取が過剰な場合はインスリン分泌量も増え、血糖値の乱高下が起こります。血糖値の急降下時にはイライラやソワソワ感が現れ、低血糖時には抑うつ、眠気が生じやすくなります。

こんな人はとくに要注意

血糖値をコントロールする3つの工夫

血糖値のコントロールは、メンタルの安定に役立ちます。「低血糖かも」と感じたら、次の3つの工夫を試してみてください。

(1)野菜から食べ始める
野菜は食物繊維やビタミン、ミネラルが豊富で、糖質が比較的少なく、血糖値の急激な上昇を防ぐことができます。野菜の次に肉・魚・卵などのタンパク質、最後に米などの主食(炭水化物)をとることで、血糖値の急上昇および急降下を回避できます。
(2)GI値の低い食材を選ぶ
GI(Glycemic Index)値は、食後血糖値の上昇度を表す指標です。低GI値の食品を選ぶことで、血糖値の急上昇・急降下を防ぐのに役立ちます。低GI値の食品の例は、蕎麦、オートミール、豆類、野菜類、果物類、さつまいもなど。米やパンを食べる際には精製された白いものより、玄米や全粒粉など未精製のものを選びましょう。
(3)よく噛んで、ゆっくり食べる
食事をよく噛んでゆっくり楽しむことで、消化を助けて血糖値の乱高下を防げます。また、噛む動作はリズム運動ですので、副交感神経を優位にして精神を安定させることにも繋がります。急いでいるときも、最初の3分間だけは「よく噛む」を心がけてみてください。

さらに快適に過ごすコツ

■腸内環境を整える
食物繊維や乳酸菌、ビフィズス菌などを積極的に摂取し、腸内細菌のバランスを保ちましょう。消化機能が改善されると血糖値も安定しますし、ストレスに対処するホルモンも分泌されやすくなります。
■食事を抜かない
食事をとらない状態=低血糖状態が長く続けば続くほど、次の食事をとった際に血糖値が急上昇し、結果的に乱高下にも繋がります。1日3食の規則的な食事で、血糖値を安定させましょう。
■間食するなら糖質以外を
間食の際には、糖質ではなくタンパク質や食物繊維、カルシウムが豊富な食べ物を選びましょう。バナナやヨーグルト、チーズ、卵、大豆製品、小魚などがオススメです。