Monthly Health Report (2023.12)
ゆるやかメンタルヘルス術
家族の信頼関係を深める
アサーティブ・コミュニケーションのコツ
年末年始は、家族との時間が増える時期。この機会にコミュニケーションを円滑にする会話術を実践し、家族との信頼関係をより深めてみませんか? 今回は、自分も相手も心地よくスムーズに対話できる「アサーティブ・コミュニケーション」のコツをわかりやすく解説します。
アサーティブ・コミュニケーションとは
アサーティブ・コミュニケーションとは、自分と相手のどちらも尊重するための自己表現の手法です。どちらかが一方的に我慢することなく、相手に無理やり意見を押し付けることもなく、「自分もOK、相手もOK」の状態を目指すことがこの手法の目的といえます。
自分の気持ちや意見を上手に伝える対話のスキルは、あらゆる人間関係を円滑にしてくれます。主にビジネスの世界で注目されている手法ですが、家庭内の課題や問題を話し合うときなどに、誤解や対立を解消して家族の信頼関係を深めるためにも役立つでしょう。
コミュニケーションの「3つのタイプ」
コミュニケーションの取り方は、おおまかに次の3つのタイプに分類できます。
- ■アグレッシブ(攻撃的タイプ)
- 「自分はOK、相手はNot OK」。自分の主張を優先するあまり、相手の感情や意見を無視してしまうタイプです。自身はうまくコミュニケーションを取れていると思っていても、相手は我慢している可能性が高く、しばしば対立や争いを引き起こし、信頼関係を築きにくくなります。
- ■パッシブ(受け身タイプ)
- 「自分はNot OK、相手はOK」。相手の感情や周囲の評価を気にするあまり、自分の意見をうまく主張できないタイプです。必要以上に我慢してしまい、ストレスや不満を抱え込みやすくなります。相手に強く主張されると断れず、無理難題も引き受けてしまいがちです。
- ■アサーティブ(相互尊重タイプ)
- 「自分もOK、相手もOK」。攻撃的でも受け身でもなく、相手を尊重しつつ、自分の意見を適切に伝えることができるタイプです。アサーティブなコミュニケーションは建設的な議論に繋がり、問題解決がスムーズになるため、無理のない信頼関係を築きやすくなります。
アサーティブな会話を支える4つのキーワード
- 「誠実」……自分の気持ちを正直に、誠実に伝えることを心がけ、相手の気持ちも無視することなく尊重します。
- 「率直」……遠回しな表現を避け、明瞭に意見を伝えます。ただし相手を責める言い方ではなく、できるだけポジティブな言葉で、また「私はこう思う」という主語を意識するのがポイントです。
- 「対等」……立場が強いことを利用して要求を押し付けたり、立場が弱いからといって自分の意見を飲み込んだりすることなく、互いに対等であることを意識して対話する姿勢が大切です。
- 「自己責任」……結果がどうであれ、「相手だけでなく自分にも責任がある」という意識を常に持つことで、よりよい信頼関係を築けます。
アサーティブ・コミュニケーションの実践(DESC法)
次の4つのステップ(DESC法)に沿って、アサーティブ・コミュニケーションを実践してみましょう。
- (1)描写する(Describe)
- まず問題や状況を客観的に描写し、事実のみを相手に伝えます。この際、感情や評価を加えないことがポイントです。例)「昨夜、約束した食事の時間に遅れたね」
- (2)表現する(Explain)
- 次に、その状況があなたに与えた影響や感情を説明し、意見を表明します。攻撃的な言葉遣いやネガティブな表現を避け、率直かつ相手の気持ちに寄り添った表現を工夫しましょう。例)「約束を破られて、私は困ったし、悲しくなったよ」
- (3)提案する(Specify)
- 問題を解決するための提案や、具体的な要求を提示します。解決案は現実的、実現可能であることが大事です。例)「時間に遅れる際は、今後は事前に電話をもらえないかな?」
- (4)選択する(Choose)
- 相手の返答によって、お互いが次にとる行動を選択します。互いに受け入れ可能な解決策を見つけ出すために、選択肢を提供し、協力しながら対話を重ねていきましょう。例)「(電話が難しい、と言われた場合)遅れる場合の絵文字を決めて、メールで送る方法ならどう?」
「アイ(私)メッセージ」を意識しよう
もう1つ、アサーティブなコミュニケーションの基本として、「アイ(私)メッセージ」も意識してみましょう。アイメッセージとは、意見を述べる際に「私」に焦点を当てる手法です。
「あなたはなぜ◯◯してくれないの?」ではなく、「私は、◯◯してもらえると助かる、嬉しい」と言い換えます。すると相手もあなたの意見に共感しやすく、受け止めやすくなります。「私は」「私の感じ方としては」という言葉からスタートすることを意識してみてください。
出典/明治安田生命保険相互会社