Monthly Health Report (2024.03)

ゆるやかメンタルヘルス術

「食べる瞑想」で心身を整える
マインドフル・イーティングのコツ

忙しさに追われる毎日。つい食事をおろそかにしていませんか? 身体はもちろん心の健康にとっても、食事は大切な要素です。そこでオススメしたいのが「食べる瞑想」とも呼ばれるマインドフル・イーティング。今回は、その効果や実践方法についてわかりやすく解説します。

マインドフル・イーティングとは

マインドフル・イーティング(食べる瞑想)とは、食事を通して瞑想効果を得るための簡単なメソッドです。手順はシンプルで特別な道具もいらないため、誰でもすぐに始めることができます。「瞑想」と聞くと座禅や厳しい修行を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、マインドフル・イーティングでは、目の前の食べ物とただ真剣に向き合うことを通して、自身の五感に集中し、心の調子を整えます。

普段なにげなく行っている食事のなかで、私たちは、視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚の五感を無意識に駆使しています。この五感をもっと意識して深く感じることで、食事がより楽しくなり、食べる量もコントロールしやすくなるのです。

近年、メンタルヘルス向上の手段として、マインドフルネス瞑想が注目されています。マインドフルネス瞑想とは、呼吸法を使って過去の出来事や未来への不安を払拭し、「今・ここ」に集中する瞑想法のことです。食事を通して瞑想するマインドフル・イーティングは、手軽で簡単にできることから、マインドフルネス瞑想の初心者向けメソッドとしてもよく活用されています。

メンタル向上だけでなく、過食防止にも効果アリ

マインドフル・イーティングは、食事の時間を利用して心を整えリセットする手法です。食べ物の見た目、匂い、歯ざわり、味など、食事中に感じるさまざまな感覚に意識を向けます。食事を通して心の中の雑念が一掃されるため、呼吸法など他の瞑想を行ったときと同様に、気持ちのリフレッシュやストレス解消に役立ちます。

また、マインドフル・イーティングを日常に取り入れると、食生活全体にも良い影響が現れます。食事に対する満足度が上がるため、食べる量をコントロールしやすくなり、過食や無意識の食べ過ぎを防ぐ効果が期待できるためです。食べる物の選択に対しても意識的になり、食事の質や栄養バランスに配慮しやすくなるでしょう。

まずは「ながら食事」をやめてみる

マインドフル・イーティングを試してみたい、と思った方は、まずは「ながら食事」をしないことを意識してみましょう。食事をする際に、テレビや動画サイト、スマートフォンを見ている人も多いのではないでしょうか? まずは、それらの気を散らす要素を排除します。

1日1食だけで良いので、テレビもスマホも消して、静かな環境で、ただシンプルに「食べること」を楽しんでみてください。会社の昼休みに「つい仕事をしながら食べてしまう」という人も、食べる間だけ手も目も止めて、食事に集中してみてください。食べ終えた後は好きな過ごし方をしてもOKです。

実践1:レーズン・エクササイズ

次に、レーズン・エクササイズを試してみましょう。これはマインドフル・イーティングの入門編にピッタリのエクササイズです。まず、レーズンを1粒用意します(チョコレートなど、他の小さな食べ物でもOKです)。集中できる静かな環境を整えたら、食べ始める前に深呼吸を2~3回行い、リラックスしましょう。

次に、レーズンの見た目をゆっくり観察します。色、形、しわの寄り方、質感などをじっくりと観察しながら、自分の心に浮かんでくる感覚や感情をありのまま受け止めます。次に、指でつまんでみます。感触や匂い、力を加えたときの形の変化などを、またゆっくりと観察しましょう。

観察を終えたら、今度は噛まずに舌に乗せてみます。舌や歯に触れる感触を、時間をかけて確認してください。その後、ゆっくりと噛んで味わいます。

こうして、1粒のレーズンをひたすら丁寧に味わうのが、レーズン・エクササイズです。これは、自分の五感をフルに感じ取るレッスンです。「何秒で次に移る」といった時間制限をするのではなく、自分が「充分に感じ取りきった」と思うまで、各工程を味わいましょう。

実践2:日常の食事に取り入れる

もちろん、レーズン以外の食べ物でもマインドフル・イーティングは可能です。チョコレートやナッツ類など、自分の好物で試してみるのも良いですね。

また、日常の食事にもぜひ取り入れてみてください。習慣化することで、心身を健やかに保つことができます。ただし、毎食実践するのは難しいという人も多いでしょう。そんな人は、「休日の朝食だけ」「おやつの時だけ」「食事の1口目だけ」というふうに、無理のない範囲で実践のタイミングを決めておくと、継続しやすくなります。